第103回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2017.3.9(木)18:00-20:00

講師

大井清文先生 (いわてリハビリテ−ションセンタ− センター長)

 

演題名

地域包括ケアシステムにおける回復期リハ病棟のあり方 —地域リハおよびJRAT活動も含めて—

講演内容

 地域リハビリテーションでは、1.リハビリテーションサービスの整備と充実、2.連携活動の強化とネットワークの構築、3.リハビリテーションの啓発と地域づくりの支援が推進されるべき課題である。特に3つ目は重要視されており、地域住民も含めた地域ぐるみの支援体制づくりが大切であると考えられている。今後は、専門的サービスのみでなく、認知症カフェ・認知症サポーター・ボランティア活動などへの支援や育成も行い、地域住民による支え合い活動も含めた生活圏ごとの総合的な支援体制ができるよう働きかけていくべきである。この考えがまさに地域包括ケアシステムの考え方そのものであるといえる。

 岩手県には9つの圏域に広域支援センター(地域リハ支援体制整備推進事業)が配置されており、それぞれの病院・施設が代表となって地域リハの推進を行っていた。しかし、広域支援センターでは人口20-30万人レベルが対象となり、決して十分な活動ができるとは言い難いのが現状である。そこで、地域包括ケアシステムの導入により、より細かな地域リハ推進のために市町村レベルでさらに小・中学校区レベルで在宅リハ支援センターを立ち上げ、日常生活の継続支援に必要な医療・介護サービス提供体制を整えることが可能となった。地域包括ケアシステムでは、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供されるシステムが重要である。また、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが大切である。

 岩手県では、地域包括ケアシステムの自助、互助の促進として「シルバーリハビリ体操指導者養成事業」を行っている。これまでの介護予防体操は、療法士や運動指導士が行ってきたが、県北や沿岸部では有資格者が少ないのが現状でそういった地域の地元住民のボランティアによる体操指導を実現させ、介護予防に努めている。講習を終了した指導者の証明書には、岩手県知事の署名がなされており、県と一体となって活動していることがよく理解できる。

 東日本大震災の支援活動では、被災地および被災者数ともに広範囲であり、到底一施設の支援では意味をなさないと考えられたため、岩手県防災対策本部と現地災害対策本部、地域包括支援センター、リハビリテーション広域支援センターとの連携調整を行う必要があった。支援内容は、避難所等における被災者の状況把握、廃用症候群予防のための運動指導、基本動作指導、健康維持のための支援、被災者への情報提供、地域の医療・保健・福祉との連携の再構築などであった。岩手県におけるリハ支援が機能したのは、これまで培った地域リハの組織が動いたことであり、JRATと関連性を持ちながら組織体制整備をしたからである。また、有資格者が少ない沿岸部が被災したため、地元の一般住民のリハビリボランティア養成が非常に重要であった。

会場

三重県総合文化センター

2017.3.9