第108回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2018.1.12(金)18:30-20:00

講師

角田亘先生 (国際医療福祉大学医学部 リハビリテーション医学講座 主任教授

演題名

経頭蓋磁気刺激治療の現状とこれから

講演内容

 経頭蓋磁気刺激治療(Transcranial Magnetic Stimulation)は磁場を生じさせ、大脳皮質内での過電流により、ニューロンを興奮させる非侵襲的な方法である。近年、反復性経頭蓋磁気刺激治療(repetitive TMS)が注目されている。rTMSは大脳皮質局所の神経活動を調整することができ、その効果は刺激頻度によって異なっている。刺激頻度を5Hz以上の高頻度にすると促進性に働き、1Hz以下にすると抑制性に働く。
 脳神経疾患に対するrTMSの治療コンセプトは大きく3つあるという。
 1つ目は脳卒中発症後に、rTMSで新たなneural networkを構築すること。rTMSを実施後に、リハビリテーショントレーニングを行うことで、脳の可塑性を高め、機能代償部位の活動性を高めることが可能となる。アプローチ方法は、高頻度rTMSで直接的に賦活する方法と、低頻度rTMSで対側大脳の神経活動を抑制し、半球間抑制を減弱させ、間接的に賦活する方法がある。
 2つ目は脳卒中によって二次的に機能が低下した部位をrTMSで賦活すること。脳卒中が影響してアパシー症状が出現する症例を経験することがある。アパシーでは前頭前野および前部帯状回の血流が低下するが、その部位に高頻度rTMSを適応すると改善することが報告されているとのこと。
 3つ目は精神神経疾患の責任病巣(機能異常部位)の機能をrTMSで元に戻すこと。まずはNeuroimagingを用いて大脳のいずれの部位に病的な機能低下(亢進)があるのかを明らかにする。その後、機能低下(亢進)部位に高頻度rTMS(低頻度rTMS)を適用して、その部位の神経活動性を高める(低める)ことによって、精神神経疾患が改善したという報告されているとのこと。

 リハビリテーションの効果をより高める方法の1つとして、経頭蓋磁気刺激治療について最新の研究を含めて分かりやすくまとめて頂きました。

 

会場

三重県総合文化センター

 

                                    2018.1.14