第109回七栗リハビリテーションセミナー
日程
2018.2.23(金)18:30-20:00
講師
パネリスト
急性期;柴田 純先生(PT 松阪中央総合病院)
回復期;冨田 憲(PT 藤田保健衛生大学七栗記念病院 リハビリテーション部 係長)
生活期;木村圭佑先生(PT 花の丘病院 リハビリテーション科・地域連携室 課長)
演題名
脳卒中の下肢装具
ー連携と各期における現状と問題点ー
講演内容
今回は、「脳卒中の下肢装具 –連携と各期における現状と問題点-」をテーマに、急性期、回復期、生活期の理学療法士の先生をお招きし、シンポジウム形式でご講演いただきました。
急性期での装具療法の目的は、関節自由度を制限し活動を再建することや、神経回路の機能再構築などが挙げられる。作製する時期は、重度の患者ほど、早期に長下肢装具を作製するメリットがあると考えられている。ただし、自然回復の起きやすい時期でもあり、身体機能が改善しオーバーブレースになる危険性もあるため、作成時期を迷うことも多い。そのため、練習用に一時的に使用できる装具を常備することや、短下肢装具に膝ギプスを使用するなどして対応している。
回復期では、難易度適正化による運動学習の効率を図るために、装具が使用されることが多い。講師の所属する病棟での患者データでは、歩行能力の改善は下肢運動麻痺の改善後よりも早期に出現する傾向がみられる。よって、運動麻痺の改善を待ってからの装具処方では遅いことが考えられる。装具の処方については、様々な評価用装具を常備しておき、実際に装着し立位や歩行の状態をリハビリ科医師とともに評価し、選択することが大切である。作成する装具の種類は、今後の生活期でも適応させやすいように調整性の高い装具を選択することが大切である。
生活期での装具所有割合を調査した結果では2割以下ほどと低い傾向であった。しかし、所要している者でも自己判断などで使用していない方も少なくないのが現状であった。また、回復期で歩行を主目的に調整された下肢装具の設定が、生活期でその他のADLでは適応できないケースもあり、訪問リハビリで対応することも多い。訪問リハビリなどで関わりのない利用者に対しては、ケアマネージャーの関わりが重要となるため、下肢装具についての教育・啓発活動も行なっている。その際、装具のみの題材では興味が引かれにくいため、疾患や障害など多種多様な話題の中の一つとして、提示することが大切である。また、装具会社とも連携し「装具カード」と呼ばれる装具作製に関わる情報を記入したものを配布する試みを開始した。今後のアフターケアに役立つことが期待される。
急性期から回復期への情報提供では、装具作製および非作製の理由を明確にすることや下肢運動麻痺の経過などを詳細に伝えることが必要と考えられた。また、回復期から、生活期へは、装具の環境設定を決めた理由やどの動作に対して設定を考慮したのかなどの情報が大切となる。今後、各期のスタッフの連携を強化し、双方で情報の共有を図ることが重要であると考えられた。
会場
2018.3.1