講師 湯浅景元先生
中京大学体育学部教授
講演内容 「一流スポーツ選手の身体操作法」
「コーチングの科学」、「これならできる簡単エクササイズ」などの著者であり、ご講演にも引っ張りだこの湯浅先生が来て下さいました。
一流スポーツ選手を相手にする場合、テレビカメラの映像から3Dのイメージを作成したり、回転速度を求めるといった解析法を使っており、イチロー選手の打撃フォームや安藤美姫選手の慣性モーメントなどの実例を見せて貰いました。
何が起こっているのかを示すことまでが湯浅先生の仕事で、それをどう解決するかはコーチの仕事です。そこで、どのように指示するか、その言い方により結果が大きく変わってきます。幅跳びで「足を高く上げて」と言うと大腿部だけが上がり、飛ぶ方向にいる人が「足の裏を見せて」と言えば足全体が上がるそうです。運動学的に正しい指摘でも動作の修正に役立たない助言もあるわけですね。
相撲での足ゆびから発想した靴の中に鼻緒を入れて打撃速度を増す話、爪が割れることから投手の球離れ時の手指屈曲動作にたどり着くプロセス、いずれも示唆に富んでいました。さらに幅跳びの一流選手やタイガー・ウッズ選手のスイングを検討すると、一流選手の動作の再現性は決して高くなく、むしろ一定ではない、との結果が示されました。動作を一定にして高い精度を出すのではなく、微調整する能力を身につけることにより、踏切がぴったりになったり、落下地点が的確になったりするわけです。そのヒントに湯浅先生はアフォーダンスという言葉でまとめられていましたが、外界風景の流れあたりがポイントのようです。
競技直前のストレッチはむしろフォームを崩すそうで、それは、筋紡錘・腱紡錘を伸び切らせてしまい、筋コントロールのフィードバックを悪くするためだろうと考察されていました。リハビリでこのレベルの問題まで起こるかはわかりませんが、違う視野から物をみることは大切でしょう。
非常に多面的な話をきけて、幸せでした。
会場 三重県文化センター
2006.4.27 SS