第93回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2015.6.5(金)   講演 18:30-20:00

講師

花山耕三 先生(川崎医科大学医学部リハビリテーション医学教室 教授)   

                         

演題名

麻痺性疾患の呼吸リハビリテーション

講演内容

 本日は、川崎医科大学リハビリテーション医学教室教授の花山耕三先生に、麻痺性疾患の呼吸リハビリテーションについてご講演いただきました。
 「呼吸リハビリテーション」とは、呼吸器の病気によって生じた障害をもつ患者に対して、可能な限り機能を回復、あるいは維持させ、これにより患者自身が自立できるように継続的に支援していくための医療である(日本呼吸管理学会/日本呼吸器学会)。麻痺性疾患の呼吸リハでは呼吸筋の筋力低下による呼吸障害、吸気筋・呼気筋ともに障害されている状態を治療対象とする。また、これらは一次的には、肺組織は正常である事が特徴である。呼吸障害をきたす麻痺性疾患としては、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、脳血管障害や脊髄損傷などがある。麻痺性疾患における呼吸障害の特徴は、「筋力低下」がその主因であることである。横隔膜をはじめとする吸気筋筋力低下により換気障害が生じるだけでなく、呼気筋筋力低下により「気道の清浄化」が障害されやすい。呼吸筋強化訓練は有効であるという報告はあるが、訓練中止後には3ヶ月以内に戻ってしまうともいわれている。吸気系の障害で換気低下が生じればやはり人工呼吸での対処が必要となり、PaO2やPaCO2の正常化を図る。人工呼吸器の使用のため長期に気管切開を行うと、気道汚染や潰瘍、出血、気道狭窄、嚥下障害などが生じる恐れがある。そのため、可能であれば非侵襲的人工呼吸器(NPPV)の使用を推奨する。呼気系の障害で咳嗽や呼気量の低下が生じれば、徒手や機械による咳介助が必要となる。麻痺性疾患では末梢気道は基本的には問題ないことが多いが、下気道から上気道までの痰の移動には、咳介助が必要となる。また、上気道から痰を喀出する場合、咽頭筋や口腔筋活動が必要となるが、これが低下しているなら吸引が必要となる。排痰を手助けする機器としては、MI-E(排痰補助装置)というものもある。
 最後に、呼吸障害があっても人工呼吸器を使用して、ADL、QOLを最大限に保つ事で社会参加が可能である事を忘れてはいけない。そのためには、自己管理(家族を含めての)できる能力や社会資源を有効に活用する事が大切である。

会場

三重県総合文化センター

2015.6.7