第94回七栗リハビリテーションセミナー
日程
2015.8.21(金) 18:30-20:00
講師
蓮見 孝先生 (札幌市立大学 理事長・学長)
演題名
アートによる日常リハビリテーション
講演内容
本日は、札幌市立大学の蓮見孝先生に、アートによる日常リハビリテーションについて分かりやすくお話を頂きました。デザイン(design)の概念は、「Dessein:こころ+Dessin:かたち」から成り立つといわれている。つまり、考えた意図をかたちにしてあらわすことがデザインであると考えられる。このデザインと医療は遠い存在のように感じられるが、HOSPITAL INTERIOR ARCHITECTUREという雑誌には、2つの密接な関係が具体例を挙げて紹介されている。例えば、普段の街に存在する自家用車やバス、道路と歩道、さらには段差などを再現した環境を病院内に設置し、リハビリテーション室として利用している。その理由は、リハビリを行う患者様の多くは「社会復帰」を目指しているのだから、入院中からそのような環境を提供しリハビリを実施するべきだという意図が存在するからである。ただただハード面を整えるという機能主義(ファンクショナリズム)ばかりでなく、そこにはユーザーの心理やニードに配慮したこころをかたちにすることが大切である。また、病院とは患者にとって普段の生活とはかけ離れた「非日常」の生活場面となる事が多いといわれている。そのような環境では、患者孤立につながったり、不安、ストレスを感じながら入院生活を送る事が強いられる。よって、このような不安やストレスを緩和するような和みとなる存在が必要である。自由に動く事のできる健康な方であれば、狭い病室などの環境に入っても、そこが嫌になれば自由に歩いて開放感のある外に行き、空の下で時間を過ごす事ができる。しかし、リハビリが必要な患者様にとってはその移動が制限されている事が多いため、生活空間である病室や廊下そのものに圧迫感や閉鎖感を軽減させる工夫が必要である(浮遊感の表現)。
講師の蓮見先生は実際に、病院でのアート&デザイン活動を展開されており、ノーマライゼーションの取り組みを行う事で、家族控え室やトイレの環境をデザインで変え、成功させている。
病院環境やそこで展開されるリハビリテーションをデザインすることにより、患者様やご家族の満足度を高め、ひいてはリハビリの治療効率を上げる事ができる可能性が考えられた。
会場
2015.8.23