七栗サナトリウム25周年を迎えて

icon 法人本部 監査室長 東 裕人 icon

 七栗サナトリウムには平成19年4月に事務責任者として着任し、坂文種報徳會病院へ異動するまでの1年間、七栗校地内の職員宿舎で生活しました。
 桜咲く春にはいっせい植物が芽吹いて色とりどりの花が競い合い、田植えが終わった水田の稲を青山高原から流れる風が揺らし、眼前を流れる榊原川を幻想の世界へと誘う初夏の蛍、街路灯に誘われて飛び交う夏の虫たち、秋風に波打つ黄金色の稲穂。移りゆく四季を全身で浴びて自然と同化し、研ぎ澄まされてゆく感性を覚えるのが心地よく、20代の頃、創設者である藤田総長に拝謁するために七栗の地を訪れた時の緊張感を想起させながら敷地を散策するのが日課になりました。
 広大な七栗校地には病院の他、藤田記念七栗研究所、職員宿舎、学生のための研修・宿泊施設などがあり、藤田総長が生活の拠点として執務された研究所周辺では、長い歳月を経た今もなお、その息吹を感じることができます。
自然と調和した優しさに抱かれながらも凛然とした環境にある七栗サナトリウムでは、総ての医療従事者が病院の総体として患者一人一人と向き合い、創設者の薫陶を受けた職員の臨床哲学を伝統的に実践しているように思われました。
「医療の本質に基づく教育の形態は、知的情的にバランスのとれた各医療職種のグループワークによってのみ完遂され、権威と孤高を誤認する非社会的象牙の塔ではなく、謙虚と包容をもって最善の医療を提供する」と言われた初代院長の森日出男先生の理想理念が受け継がれています。
清少納言が『枕草子』で名湯と讃え、僅かに硫黄泉が匂う、ヒドロ炭酸を主成分とするローションのような泉質の名湯、心身共に人を清浄化するフィトンチッドに充ちた豊穣な自然環境の中、高い専門性を生かした新たな医療を社会に提供し続け、藤田記念生薬研究所と共に藤田学園の要のひとつとして、七栗の地で永劫に発展することを願います。                                      

 

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