七栗サナトリウムに思いを寄せて

icon 藤田保健衛生大学病院 薬剤課長 福浦久美子 icon

 七栗サナトリウム25周年、おめでとうございます。私は2003年2月から5年の間、勤務をいたしました。とても良い経験をさせていただいたと思っています。脳障害後にリハビリに励まれる患者さん、ご高齢で不自由な状態の患者さん、そして緩和ケアで過ごされる患者さん、即ち第1病院のような急性期治療で治療後の患者さん方が頑張る姿、又は静かに過ごされる姿を身近に経験する事で、医療とは病気の治療だけでなく、その後の患者さんの生活を一緒に支える事もとても重要なのだと実感できました。七栗サナトリウムを初めて訪問した時に閑静な環境というだけでなく、穏やかな雰囲気、と感じたのは、その支える医療を実践する職員の温かい心があったからであり、5年間の業務を通して自分も幾許か身に付けることができたかと思います。また、赴任当時、私は係長であったため病院運営会議にも列席させていただきました。様々な問題に次々と判断を下される院長が、他の教授の意見に時には譲歩し、看護部の要望と向き合い、事務管理と連携をとる会議の中で、私は技術職としてだけでなく病院全体として業務を考える事を学びました。
 今、医療の中では「チーム医療」が推進されていますが、私の赴任と同年に栄養管理でご高名なH教授が就任され、正にNSTとしてのチーム医療が展開されました。以前の薬剤師は病院の中で薬品と向かい合う時間が圧倒的に多かったため、NSTの実践において患者さんの許へ他の医療スタッフと共に回診をする事は大きな変革でした。患者さんを中心として多職種がそれぞれの立場から意見交換をする事は大変勉強になりました。しかしチーム医療自体は、七栗サナトリウムでは以前より実施されていたように思います。その当時、リハビリ科医師から「リハビリではチーム医療は当たり前」と言われた事がとても印象に残っています。確かにリハビリ科では医師、看護師、療法士の連携が蜜であり、その下地があったからこそNSTの急速な展開が可能であったのかもしれません。ここでの経験を基として私は今、第1病院でNSTに参加して活動を行っています。
 七栗サナトリウムへの勤務は、宿舎を利用した単身赴任でした。5年間、無事に勤務できたのは家族の理解と支えがあったからこそですが、職員の皆さんにも随分と支えていただいたように思います。宿舎の生活環境は、施設や事務の皆さんにお世話になりました。誘って貰った伊勢の朔日餅、普段は騒々しいおかげ横丁でさえ深夜には荘厳な気配があり、早朝にかけての賑わいには人間の活力を感じました。豊かな自然の中で見せて貰った蛍の群舞はとても感動的で、そして清少納言も愛した榊原温泉に癒されました。しかし何よりも、院内で皆さんがよく声をかけてくれる事がとても嬉しかったです。薬剤師はリハビリ療法士とはあまり接点がないのですが、挨拶をしてくれる事で顔を覚えました。毎年行われる院内バーベキュー大会に子供が大勢参加していてびっくりしましたが、だからこそ家族的な雰囲気が育まれたのかもしれません。外来部門の忘年会で「数人集まれば開始をし、以後、人が到着する度に仕切り直しをする」、ことがありました。たまたまだったかもしれませんが、この方式もそれを受け入れる人達も大好きです。
 第1病院に戻って5年目になります。患者数も職員数も格段に多いため、業務に忙殺されていますが、七栗サナトリウムでの経験を活かして今後も様々な業務に努力したいと思います。現在、薬剤課には第1病院薬剤部から2名の薬剤師を応援に出しています。私達は双方の交流をし、それぞれの良いところを経験することでより良い医療を実践していきたいと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。                                 

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