三重県、青山高原の裾野、藤田学園の原点
七栗に敬称されたもの
医療技術部 薬剤課 森 由紀子
「出来上がった!」二人の薬剤師は、安堵の表情でこう言いました。七栗サナトリウムの医薬品集第一号完成の瞬間でした。薬剤師は小林由利子先生と長井恭子先生です。開院当初、医師や看護師たちから、七栗で使える医薬品情報集を切望されていたものの調剤業務や薬品管理業務を確立することで多忙を極め、なかなか手をつけられずにいました。とり急ぎ、当時の第一病院永田薬剤部長の許可を得て第一病院の医薬品要覧のなかから、七栗の採用薬品を抜き出してコピーし作成する事となったのです。コピー用紙をはさみで切って糊で貼り付けて、当時の採用薬品は内外用薬と注射で150品目ほどでした。毎日調剤業務が終わると、その作業ばかり繰り返し、開院後半年ほどかかって、ようやく完成したのでした。発行に際して、巻頭に森 日出男院長先生から次のようなにお言葉をいただきました。「膨大な量の医薬品情報が出されるなか、そのすべてを理解することは不可能に近い、適正な薬物治療を行うためにこの医薬品集の持つ役割は計り知れず大きい、確かな知識とそこに医療者としての思いを常に盛って欲しい。」
私は薬剤補助として、25年前にこの七栗サナトリウムに勤めました。歳月流れ、開院当初から薬剤課にいるのが、私一人となりまして、上司から25周年記念にあたり、当時の写真などないかと聞かれました。あちこち捜しましたがないのです。失くしたのではなく、最初からないのです。毎日業務に精一杯で貴重な歴史を残してない事に気がつかず過ごしてきたのだと今さらながら残念に思っております。
それではと、当時を思い出して何か書いてと、またまた上司におだてられ、調子にのって書いてます。
小林由利子先生 長井恭子先生 山尾 浩之先生 河合美幸先生 中井敏夫先生
池村美乃里先生 松島功先生 賀川まゆみ先生 矢野裕章先生 仙田保典先生
福浦久美子先生 加藤雅美先生 柴田賢三先生
七栗薬剤課で歴史を作っていただいた先生方のお名前を列記させていただきました。 懐かしいのと、感謝の気持ちでいっぱいになります。
開院当初、薬剤師2名でスタートした薬局ですが、現在薬剤師は5名で、入院調剤一
包化・持参薬鑑別・TPN無菌調整・薬剤情報おくすり手帳の発行・NST活動・薬剤指導・麻薬管理・医療事故安全対策・DI業務・感染対策・褥瘡・治験と七栗の医療チームの要となって活躍しています。「志」という言葉はもう、若い人たちは使わないかもしれません。でも長い間、七栗の薬剤師たちを間近に見てきて思うのは、この「志」という言葉です。博く学びて篤く志し切に問うて近く思う仁其の中に在り 今日も薬局では、早朝から薬剤師が分包機の前に立ち、調剤しています。「良くなりますように」の思いを盛って薬が次々薬袋に収まっていきます。薬の情報を丁寧に研鑽し努力を惜しみません。薬の適正使用について議論する事もしばしばです。スペシャリティとしての誇り感じます。患者様の元に駆けつけ薬の説明をし、退院後の患者様の事を思う。薬剤課では、誰も、一分一秒を惜しむように気迫を持って職務にあたっています。彼らを動かしているものは、過っての先輩方と同じ崇高な志です。これから、日本は超高齢化社会をむかえ、福祉や医療はどうなっていくのか?不安なことばかりささやかれておりますが、今薬剤課で働く若者たちをみていますと、そう悪くない、心配いらないと思わせてくれます。