2018.12.5(水) 18:30-20:00
川手信行 先生 昭和大学医学部リハビリテーション医学講座 教授
脳卒中患者の活動性向上を目指したリハビリテーション治療へのアプローチ
脳卒中患者は急性期・回復期病院でのリハビリテーションを終え、在宅に帰り生活を送るが発症前に比べ活動量が著しく低下してしまうという課題がある。今回は脳卒中患者の在宅復帰後の活動量の現状や、評価の仕方、アプローチ方法まで具体的に症例を交えながらわかりやすくお話して頂いた。
病院でのリハビリテーションは受らけれる期間が短いが退院後の生活はその何倍も長いため、生活期の中で機能低下や能力低下を引き起こしている患者をしっかりと支援していくことが重要である。しかし活動量を24時間評価し続けることは困難である。そこで生活習慣記憶装置(ライフコーダー)を使用して活動量を客観的に評価されていた。ライフコーダーは万歩計と加速度計の機能があり、運動量や歩数を計測することができる。先生の調査では脳卒中患者の在宅復帰後の活動量は健康な青年と比較して半分以下に低下しており、健康な高齢者と比較しても著明に低下していた。また一日の運動強度の推移もライフレコーダーを用いて比較されており、脳卒中患者は正午過ぎの運動強度が健康な青年・高齢者と比較して低下していた。脳卒中患者は活動量が低下することで、機能低下を伴い、また機能低下が活動量の低下を引き起こす。このような負のスパイラルを正のスパイラルに変換することが必要である。そのためには活き活きと生活し自らの意思で活動する、すなわち主体性が重要となる。現在提供されているリハビリテーションの中には患者がリハビリ依存してしまうケースもみられており、本来は患者の主体性の確立するために、やりがいや生きがいのある新しい生活の再構築をサポートする新しいリハビリテーションの提供が必要である。そのための取り組みの一つが「身近でリハビリテーション」である。身近でリハビリテーションは利用者の目標を達成するためにどこでも気軽に行えるリハビリテーションプログラムを療法士が作成し、それを利用者に在宅で行えるように指導し、習得させる取り組みである。従来の筋力増強訓練を主体するリハビリでは筋力増強は期待できるが活動量の向上は期待できなかった。しかし身近でリハビリテーションでは活動量が向上し、活動量が向上することで身体機能も向上させ、正のスパイラルを構築することができていた。
そのほかにも行政を巻き込んだ在宅障がい者の支援システムの構築やNPO法人を利用した取り組みなど脳卒中患者の活き活きとした主体性のある生活を支援するための取り組みについて教えて頂いた。
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