2019.1.29(火) 18:30-20:00
三宮克彦先生 熊本機能病院 総合リハビリテーション部
災害時のリハビリテーション支援の実際~もし被災したら…熊本地震の事例~
日本では、死者・行方不明者3000人以上の大規模自然災害が、おおよそ13年に1度起きている。今回は、災害医療と災害リハビリテーションについてお話しいただいた。災害医療は阪神淡路大震災から始まり、以降DMAT(災害派遣医療チーム)やJRAT(災害リハビリテーション支援関連団体協議会)など、多くの組織が発足された。
DMATは、原則として災害発生から48時間以内に被災地へ派遣され、3日程度で撤退する。それに対し、JMATはその後を引き継ぐ形で、避難所や救護所で医療活動を中心に行う。
JMATの具体的な活動は、エコノミークラス症候群・生活不活発病に対する予防活動、避難所の環境整備などである。熊本県復興リハセンターが実際に行った避難所での活動として、靴を履かずに屋外のトイレに行けるような動線の整備、小さな段差の解消、集団および個別でのリハビリテーションなどが挙げられた。
また平成28年4月14日に発生した熊本地震における熊本機能病院の事例についてお話しいただいた。混乱する状況の中で、入院患者を院内の安全な場所に人力で移動したり、病院に集まってきた人々に医療的処置を施したりした経験を、写真を交えて生々しくお伝えいただいた。
熊本地震の事例を踏まえ、被災地域の病院の役割として、1.病院の被災状況の確認、2.職員家族の安否確認、3.周辺状況の確認、4.周辺住民への対応、5.施設機能回復のための準備の5つが挙げられた。
これらを実現させるために、病院においてもBCP: Business continuity planning(事業継続計画)の策定が必要であるという。BCPとは企業が災害に遭遇した際に、事業資産の損害を最小限にとどめ、事業の早期復旧を可能とするために、平常時から行うべき活動や事業継続のための方法・手段を決めておく計画である。医療BCPの特徴は、病院の安全を守ること、医療の継続を図ること、医療の早期復旧を遂げることである。
医療BCPにおける課題は初動体制であり、震災後すぐに集まることのできる自主参集者数を予想し、人員配置の調整やどのスタッフでも最低限の対応ができるようアクションカードを作成しておくことが大切である。またスタッフやその家族の休憩場所の確保やストレスケアも重要となる。
災害現場において想定外の状況は必ず起きる。しかし、想定内の備えを十分に行っておくことで、その思考プロセスが必ず活きるという。「普段していることしかできない、平時からやっていることが大事である。」と強く述べられた。
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