2024.11.15(金) 18:00-19:00 ハイブリッドセミナー形式
講演1:種村 浩 先生(伊勢赤十字病院 脳神経外科 副部長・脳卒中センター 副センター長)
講演2:宮 史卓 先生(伊勢赤十字病院 副院長・脳卒中センター長・脳神経外科部長)
講演1:最新の脳血管障害急性期治療
講演2:脳卒中 -再発予防とリハビリへの期待-
講演1:最新の脳血管障害急性期治療
脳血管障害の急性期治療は、以前に比べ進歩している。くも膜下出血,脳梗塞,脳出血の治療について,詳しくお話をいただいたので,以下に要旨をまとめる.
くも膜下出血の破裂脳動脈瘤の治療には、クリッピング術とコイル塞栓術がある.コイル塞栓術は身体への負担が少ないが,手技が難しいことや再発の懸念があった.近年では,コイルの形状の変化やメッシュ状のステントであるFlow diverterを使うなど進歩している.両者の治療に優劣があるわけではなく,現在は両者を病態により使い分けることが多い.
脳梗塞の治療については,血栓溶解療法,t-PA静注療法,経皮的脳血栓回収療法があげられる.現在は,t-PAの適応が発症から3時間以内が4.5時間へ延長された.加えて,ドクターヘリの導入により,遠方から搬送された患者でも時間内での治療できることが増えた.頸部頸動脈狭窄症に対しては,頸動脈内膜剥離術(CEA)、頸動脈ステント留置術(CAS)がある、両者ともデバイスの工夫により治療成績は上がっている.くも膜下出血同様,現在は両者を使い分けるようになっている。
脳出血の治療は従来とあまり変わっていない,主に定位脳手術,内視鏡での血腫吸引が用いられている.急性期での脳血管障害の治療は完結しない,急性期病院では,なるべく早く回復期病院に繋ぐよう治療が行われている.
講演2:脳卒中 -再発予防とリハビリへの期待-
日本の現状,高齢化社会における医療需要,脳卒中再発予防からリハビリへの期待まで幅広くお話をいただいたので,以下に要旨をまとめる.
現在の日本は,超高齢化社会に突入し,社会保障費の増大、介護者の減少が問題となっている. 日本に活気ある経済をもたらすためには生産人口の確保が重要である.そのため,労働者が脳卒中に罹患しないこと,また,脳卒中に罹患した人の職場への復帰支援が必要である.
脳卒中の予防や再発予防については,高血圧への対応が必要となる.高血圧の成因には,食塩感受性の人には,減塩が有効であるが,食塩非感受性の人は加齢とともに血圧が上昇するため.減塩指導のみでは不十分である.また日本人は遺伝子的に塩分が必要といわれていることから,代用塩の使用,果物と野菜の摂取やDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension;高血圧を防ぐ食事)の摂取が推奨されている.
サーカディアンリズム(概日リズム)では体温は夕方に上昇する.そのため,夕方に運動すると脂肪が落ちやすい.また,有酸素運動は脳由来神経栄養因子(BDNF)増大させること,運動はセロトニンを増やすトリプトファンの濃度を上げる効果があるとされている.
食事面では,セロトニン分泌に関わる,EPA,DHAの摂取や長寿命が期待できる食事への切り替えが必要である.再発予防のためにも薬に頼るのではなく,食生活や運動習慣などの生活習慣を変えるような指導が求められている.
リハビリテーションには、患者の気持ちを前向きにして自宅に戻れる喜びから,一歩進んで仕事をできる喜びを与えることが必要である.日本の未来のためにリハビリに従事する方々の力が求められている.
会場風景
(左より)大高洋平病院長、種村浩先生、宮史卓先生、平野哲先生
三重県総合文化センター レセプションルーム
※対面とzoomを用いたインターネット配信を並行するハイブリッドセミナー形式
<2024.12.30>