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第131回七栗リハビリテーションセミナー

日程

2025.10.3(金) 18:00-19:00

講師

講演:鈴木 秀謙  先生(三重大学大学院医学系研究科 脳神経外科学 教授)

演題名

講演:脳動脈瘤が破裂すると何が問題か? 〜くも膜下出血の最新治療と三重県の現状〜

講演内容

講演:脳動脈瘤が破裂すると何が問題か? 〜くも膜下出血の最新治療と三重県の現状〜

 本講演では、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(SAH)の病態と治療の最新動向、さらに三重県における現状について解説がなされた。脳卒中の死亡率は低下したが、発症率は依然として高く、寝たきりの原因1位となっている。くも膜下出血は、脳動脈の瘤が破裂し、くも膜下腔に出血することで発症する。動脈瘤を有する人は多いものの、実際に破裂するのはごく一部であり、一度破裂すると致死率が高く、手術を受けても完全回復に至る患者は少ないとされる。破裂時には頭蓋内圧が急上昇し、脳血流が遮断されるため、迅速な診断と治療が求められる。
 脳は体重のわずか2%しか占めないが、全身血流の約20%を消費しており、酸素やグルコースの貯蔵がない。そのため、血流の途絶は短時間でも重大な損傷につながる。近年、診断技術や治療機器の進歩によりくも膜下出血の治療成績は向上しているが、依然として死亡率は約51%、生存者のうち30%に後遺症が残る。初診時の見逃しも12〜51%に及び、頭部CTでも未発見率は2〜10%とされている。
 治療法には、開頭クリッピング術と血管内治療(コイル塞栓術)がある。クリップおよびコイルの普及により治療成績は改善しているが、患者の高齢化が進む中で転帰の改善は限定的である。特に日本では65歳以上の高齢患者が多く、手術合併症や全身併存症の影響が大きい。三重県内でも地域差がみられ、東紀州では高齢化により患者数が減少傾向にある一方、北勢地域では今後増加が予想されている。特に75歳以上の増加が予測されるため、今後は75歳以上の患者に対して侵襲の少ない安全な手術をいかに実現するかが課題である。
 また、くも膜下出血後には遅発性脳虚血や水頭症といった二次的合併症が問題となる。特に正常圧水頭症は「治る認知症」とも呼ばれ、リハビリ中の急なADL低下や再発性の動作障害に注意が必要である。CTやMRIによる早期診断とシャント手術による治療が有効である。
 近年では、新しい塞栓デバイスの開発や術中モニタリング技術の進歩により、治療が出来ない症例はどんどん少なくなり、より簡便かつ確実な治療へ進歩してきている。

講師の鈴木秀謙 先生(中央)と座長の大高洋平 病院長(右)、平野 哲 副院長(左)

会場

三重県総合文化センター

<2025.10.12> 

                                                                  

 

    

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